たどり着いたところは街を見下ろせる自然公園だった。
リョーマは少しほっとした。少なくとも夢は正夢ではなかったのだから。
見晴らしの良い位置にあったベンチに二人して腰をおろした。
「誕生日プレゼントだ。」
今まで黙ったままだった手塚が口を開いた。
差し出されたブルーの紙袋の中身、それは目覚まし時計だった。
「音がだんだんと大きくなるタイプだ。これでしっかりと起きろ。」
手塚が部長だった頃、リョーマは散々寝坊して遅刻の常習犯だった。その度に校庭を走らされて
いたのだ。勿論今もその悪癖は直ってはいないのだが・・・。
「嫌味っスか。」
ふてくされるリョーマの頭を手塚がぽんぽんと叩いた。
「お前のことを思っていってるんだぞ。」
手塚のしぐさに、リョーマは数ヶ月前を思い出していた。横にいることが当たり前だったあの頃
が懐かしかった。
もっとも、頭を一番叩いてきたのは英二先輩だったが・・・。
「どうもっス。」
リョーマは照れくさげに答えた。
「それともうひとつ・・・」
リョーマの横に座っている手塚が動く気配がした。
ふっと横を見ると、先ほどまで前を向いていた手塚の顔が今、目の前にあった。
「お前がこの世に生まれてきてくれた奇跡に感謝する。リョーマ、生まれてくれてありがとう。」
そういって手塚はリョーマの頬を両手で抱え、額にキスをした。
リョーマの顔に血が駆け上るのがわかった。